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生活保護の条件とは?最低生活費がカギ

花の女性

生活保護は、生活に困窮する方に対し、その困窮の程度に応じて必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障するとともに、自立を助長することを目的とした制度です。

生活保護についてはいろんなブログやサイトで説明されていますが、法律用語そのまんまであるなど、初心者にはわかりにくい記事が多いなと感じていました。

福祉経験のある士業として、生活保護制度についての入口をわかりやすく説明したいと思い今回記事にしています。

まずは生活保護ってどんな制度と知りたい方は必見です。

この記事でわかること

  • 生活保護は個人ではなく世帯単位が原則である
  • 「最低生活費」より収入が低いとき生活保護が受給できる
  • 申請は福祉事務所へ
  • 扶養義務者の状況や財産の調査が行われる

※この記事は2020年3月現在の法令をもとに書いています。

 

生活保護の条件とは?最低生活費がカギ

生活保護の条件とは?最低生活費がカギ

まずは生活保護の仕組みについて理解しましょう。

生活保護のしくみ

世帯単位の原則

まず、生活保護は世帯単位の原則があります。

たとえば、両親と住んでいる25歳の無職の方が「生活保護をもらいたい」と福祉事務所を訪ねても、すぐには生活保護はもらえません。

まず一緒に住んでいる両親の収入はどうなのか、見られます。

また夫と妻と子どもがいる世帯で、妻がと子どもは「私たちは無収入だから」と言ってももらえません。

夫の収入がどうなのか、それで生活できるんじゃないかということが言われます。

よくあるのは、離婚して実家に子どもを連れて戻った場合、「親に迷惑をかけたくないから、私たちだけ生活保護を受けたい」と相談しても、親の収入が多いと生活保護を受給できません。

ただし、生活費に困ったときまずは福祉事務所に相談することをおすすめします。

今お話ししているのは原則なので、「じゃあどういう条件なら受給できますか」ということを、自分から聞くことが第一歩になると思います。

動くか動かないかであなたの人生は右にも左にも転ぶのです。

(※世帯単位の原則には「世帯分離」という例外もあります。詳しくは福祉事務所に聞いてみましょう)

最低生活費を下回ること

今あなたに月々の収入があるとします。

福祉事務所はあなたの世帯の構成をもとに「最低生活費」というものを計算します。

例1)月収20万円で最低生活費15万円の場合

20万円ー15万円=5万円あまる

⇒5万円余裕があるので生活保護は受給できません。

最低生活費

 

逆に、

例2)月収15万円で最低生活費20万円の場合

15万円ー20万円=5万円たりない

⇒生活保護費が5万円でるかも・・・

最低生活費2

かも・・・というのは、「働けるなら働いてください」というのが生活保護なので、妻が無職だったら、妻も働いてこの5万円を埋めるよう就労支援などを紹介されることもあるからです。

しかし、夫も妻も病気があってこれ以上収入が望めない、親族も支援できないというのであれば、可能性はあります。

そして収入には、年金・児童扶養手当などの手当も含めて考えます

最低生活費とは

最低生活費の計算は複雑です。

とりあえず以下の種類があります。

  • 生活費第1類(生活扶助)
  • 生活費第2類(生活扶助)
  • 住宅費(住宅扶助)
  • 教育費(教育扶助)
  • 医療費(医療扶助)
  • 介護費(介護扶助)

生活費第1類は食費や洋服代など個人の費用、生活費第2類は光熱費など世帯全体の費用です。

生活費については住んでいる場所で金額が異なります。

東京は物価が高い、地方は安いといえばイメージしやすいですよね。

1級地の1から3級地の2まで日本全体を6区分に分けています。

東京は1級地の1、那覇市は2級地の1、宜野湾市は3級地の2。

1級地、2級地及び3級地の1以外の市町村は3級地の2です。

自分の住んでいる市町村がどの級地に該当するかは厚生労働省のHPで調べることができます。

お住まいの地域の級地を確認[PDF形式](厚生労働省HP)

住宅費は基準の範囲内で実際の家賃相当額。

教育費は小中高で異なります。

住んでいる地域によって金額が異なる部分があるので、お住いの市町村の福祉事務所に問い合わせるのが間違いないですね。

最低生活費を積み上げて、収入充当額と比較し、足りない部分が生活保護費となります。

つみあげ

 

収入充当額」と言うのは、月の収入から最初に引くものです。

収入額から自動的に引く基礎控除

社会保険料や所得税。

未成年だったら引いてくれる未成年控除などなど。

月の給料の総額からいくらか引いてくれるんですね。

これらを積み上げる基準表がありますが、簡単にはわかりません。

生活保護制度における生活扶助基準額の算出方法(令和元年10月)(厚生労働省HP)

厚生労働省が公表した生活扶助額の例で言うと、

厚生労働省「生活保護制度の概要等について」(PDF)より抜粋

3人世帯(33歳、29歳、4歳)で東京都区部なら158,900円、地方郡部なら133,630円。

高齢者単身世帯なら、東京都区部なら79,550円、地方郡部なら65,500円。

母子世帯(30歳、4歳、2歳)なら、東京都区部189,190円、地方郡部161,890円。

世帯の構成人数、年齢でこんなに金額が異なります。

一概に「私はいくら?」というのはネットで調べるのは困難です。

お住いの市町村の福祉事務所を訪ねてみましょう。

相談するタイミングは、生活に困る前がいいと思います。

最低生活費を知っておくことで、「いくらくらいになれば相談していいんだな」と言うことわかります

生活保護の申請

申し込み

まずは申請書

生活保護の申請に必要なのは、「申請書」です。

申請書はお住いの市町村の福祉事務所にあります。

市にお住いの方は市役所内に、町村にお住まいの方は基本的に県の福祉事務所です。

県の福祉事務所がどこにあるかわからない場合は、都道府県庁代表電話番号に電話して「生活保護担当課へつないでください」と話し、県の生活保護担当から聞くことができます。

先ほど来話しているように、いざ困ったときに相談するよりはまずは「困りそうなとき」事前に相談に行く方がいいと私は考えています。

一時期「生活保護水際作戦」が問題となりました。

窓口で「あれこれ理由を言って申請書を渡さない」問題です。

まだ一部の福祉事務所でもあるかもしれませんが、水際作戦が問題となったとき厚生労働省からも「必要な人にはしっかり対応しなさい」と指導があったので、だいぶ改善されつつあるのかなと思っていますが。

また、申請書には「添付書類」と言ってその他資産を証明するような書類や同意書もあわせて提出することが必要になります。

申請書をもらうときに一緒に渡されますので、確認してください。

「どうしても申請したい」ということを、福祉事務所は拒否する権限はありません。

とにかく申請したいという方は、窓口であれこれ言われても「とにかく申請します」と言って申請書を受け取って申請することもできます。

行政がOKするから申請書を出すことができるという制度ではありません。

(調査の結果保護が認められないこともあります)

申請後1か月以内に結果が出る

生活保護の申請を受けて、福祉事務所は原則2週間以内に保護するかどうかの決定をしなければなりません。

が調査に時間がかかるときは、最長1か月まで伸ばすことができます。

ので、たいていは1か月かかる場合が多いです。

「じゃあ保護費が出るのは1か月あとの日からか?」と思うかもしれませんが、そうではありません。

保護が決定された場合は、申請の日にさかのぼり保護費が支給されます。

支給そのものは決定後ですが、その間に「生活福祉資金貸付制度」などの活用も一つの方法です。

扶養義務者への照会

生活保護を申請すると、扶養義務者に対して「Aさんから生活保護の申請がありますが生活の面倒を見ることはできませんか」というような「扶養義務照会」が申請者の親、兄弟、子に対して送付されます。

以前お笑い芸人が自分の母親の扶養義務を拒否していたことが問題となりましたね。

この扶養義務照会によって身内に生活保護の申請が知られてしまう・・・ということを心配して申請をためらう方もいます。

大げんかして身内との関係が最悪の状態なら、正直に福祉事務所に話してみて事情を検討してもらいましょう。

離婚した母親の子について、別れた夫は「扶養義務者」です。

DVで離婚した場合はそのことをきちんと福祉事務所に話して、扶養義務照会に配慮してもらいましょう。

財産の調査

生活保護の申請をすると、預貯金の他に不動産や自動車の保有について調査が行われます。

不動産の場合は、

  • 住宅ローンの支払いが済んでいる
  • 自宅を活用したほうが保護の目的にを達成できる

といった場合は、所有を認められる場合があります。

自働車については、保有を認められるというケースはあまりありません。

仕事のためにどうしても車が必要(通勤ではなく)と言う場合か、体に障害があって移動手段としてどうしても車が必要といった限られたケースです。

他人名義の車を運転していても、見つかると指導されます。

車の所有が認められないことをデメリットとして、生活保護を申請しない方もいます。

沖縄など生活に車が必要なところは結構ネックですよね。

しかし生活保護というのはずっと利用しなくてもいい制度なんです。

困ったときに一時的に利用するというのもありです。

体調が回復して元気になったらバリバリ仕事して生活保護を終了し、また車を購入するということも可能です。

苦しいとき、困ったときはぜひ生活保護制度の利用を検討してもいいのかなと思います。

まとめ

いかがでしたか。

簡単に言うと、生活保護は基準があってそれを下回る場合に差額が支給される制度です。

そして、

  • 生活保護は個人ではなく世帯単位が原則である
  • 「最低生活費」より収入が低いとき生活保護が受給できる
  • 申請は福祉事務所へ
  • 扶養義務者の状況や財産の調査が行われる

というのが生活保護ということがわかりました。

ここで生活保護の申請をするときに、福祉の現場からいた者として一言。

福祉事務所のケースワーカーも人間です。

困っている人は助けたいと思うのが人の人情。

「困ってるんだから、助けろよ」

と言うより、

「困っています、助けてください」

と正直に困っていることをお話して、「将来的には保護の卒業も考えています」という前向きな姿勢で相談するのがベターだと思います。

制度そのものに対しては正々堂々と生活保護の利用を主張していいと思いますが、現場は人間同士のやり取りです。

やたらめったら行政にかみつく人もいますが、「行政対象暴力」ということで行政側も本気になって対応策を検討してきます。

指導を聞かない生活保護利用者は、きっぱり保護廃止なることだってあり得ます。

あの手この手で行政を自分の形に合わせようとするのではなく、制度を上手に利用するという方が賢明だと思います。

と言うことをお伝えして、筆を置きます。

 

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